私の恋がはじまった日

 そういえばこれって…、相合い傘になるのでは…?


 そう思い当ってしまい、私はまた一人で赤面した。


 だめだめ考えないようにしよう!考えるとまたドキドキしてきてしまう。


「………」


 本当は聞きたいことがあるのに。


 どうしてあの日、私のおでこにキスなんてしたの…?やっぱり私をからかっただけ?


 藤宮くんがなにを考えているのかわからないよ。


 なんだか変に緊張してきた。肩に力が入っちゃう…。


 その様子に気がついた藤宮くんが、ふっと笑った。


「佐藤、なんか緊張してる?」


「えっ!?いや!?な、なんで私が藤宮くん相手に緊張するのっ」


「ふーん」


 藤宮くんはなんだかやたらと楽しそうにしている。


「…、………」


「え?」


 藤宮くんの言った言葉が、聞き取れなかった。


 雨足が強くて、お互いの声もなかなか聞こえなくなってきたのかもしれない。


 聞き返すと、藤宮くんは私の耳元に顔を寄せた。


「俺のこと、意識してるんだな」


「ええっ!?」


 藤宮くんにささやかれた右耳が熱くて、私はとっさに手で(おお)った。


「い、意識なんて別にっ」


「ふーん、あっそ」


 藤宮くんのからかうような表情に、私はぷいっとそっぽを向いた。


 またいじわるだっ!藤宮くん、私のことからかって楽しんでるんだっ!


 そう頭ではわかっているのに、どうしてもドキドキしてしまうのが悔しい。


 なんでこんなにドキドキしちゃうんだろう…。


 きっと近くにいるせいだよ…!そうに違いないっ!


 そうこうしているうちに、うちの前まで帰ってきた。

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