私の恋がはじまった日

 それから数日後、しろくまのキーホルダーが見つかった。


「あったぞ」


「え?」


 男の子の声に振り返った私は、その手に握られたしろくまのキーホルダーを見て、思わず彼に飛びついてしまった。


「本当だっ!ありがとう!私が探してたキーホルダーだよ!!」


 ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ私に、彼は照れくさそうにしていた。


「どこにあった!?」


「あそこの木に引っかかってた」


 そう言って彼が指差す先には、大きな桜の木があった。


 高いところだったから、私たちじゃ目に入らなかったんだ。


「よかった~!見つかって!見つけてくれてありがとう!」


「ん」


 素っ気ない返事だったけれど、彼も少しうれしそうに見えた。


「私、学校で友達とうまくしゃべれなくて、このしろくまのキーホルダーがいつも支えだったんだ」


「そうか、よかったな」


「うん!でもね、きみが手伝ってくれてからね、きみと話すのが楽しくて、もしかしたら学校でも同じように話せるんじゃないかなって、チャレンジしてみたの!そうしたらみんなと仲良くなれたよ!ありがとう!」


 彼と話をしていくうちに、他の子と話すのもがんばれるんじゃないかな、って思った。


 いつもはこのしろくまのキーホルダーが私に勇気をくれていた。


 けれどいつからか、きみに勇気をもらうようになっていたんだよ。

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