私の恋がはじまった日
どうして藤宮くんが私に対してこんな態度なのかわからないけど、ひとまず傘に入れてもらったお礼をしなきゃ。
「ふ、藤宮くん、傘に入れてくれてありがと…って!藤宮くん、肩びしょぬれじゃん!」
小さな折り畳み傘を二人で使っていたせいか、藤宮くんの右肩はぐっしょりとぬれていた。
「ああ、本当だ」
「このままじゃ風邪引いちゃう!中入って!」
私は藤宮くんを家に招き入れると、あわててタオルを取りに行った。
藤宮くんは家に上がるつもりはないみたいで、玄関に立ったままだった。
「お待たせ!早くふかないと!」
私が藤宮くんの肩にタオルをぽんぽんとあてていると、藤宮くんは私の手を掴んで、なんだか少し恥ずかしそうに「自分でできるから」と言った。
「ごめん…こんなにぬれちゃってたなんて、気がつかなかった…」
「佐藤がぬれてないなら、それでいい」
「だめだよ!もっと自分のことも大事にしなきゃ!」
私の言葉に目を丸くした藤宮くんは、「わかった」と答えてくれた。
「なにか温かい飲みものいる?」
「いや、いい。もう帰るから」
「そっか」と返事をしようとして、口を開けたとき、玄関の外がピカっとまぶしい光に包まれた。
かと思うと、ものすごい地鳴りのような雷の音が鳴り響く。
「きゃあっ…!」
私はあわてて耳をふさいで、目をぎゅっとつぶった。