私の恋がはじまった日

 応援合戦は、それぞれの応援団が私たちを鼓舞してくれるもの。


 私たちが所属する白組の応援団長は、なんとサッカー部部長の菅原先輩だった。


「え!菅原先輩っ!?」


 菅原先輩は学ランを着て、応援団のメンバーの中心に立っている。


「美音んとこの先輩じゃん」


 椿がなぜだか不服そうに私の隣でつぶやく。


「へえ、そうなのか」


 私をはさんで反対側で藤宮くんもふーん、と菅原先輩を見つめる。


 女子たちのきゃーきゃーいう声が大きくなっていく。


「すげえな、先輩」


「菅原先輩、めちゃめちゃモテるんだよ」


 先輩は穏やかでみんなに優しい。


 サッカーをしている姿はかっこいいし、成績も良くて大人っぽい。


 下級生からもかなりモテていると思う。


 すごいな、菅原先輩。部活の合間に応援団の練習もしてたんだ。


 私が尊敬のまなざしを先輩におくっていると、菅原先輩がちらりとこちらを見た。


 私と目が合った気がする。


 すると先輩は、ぱちっとウインクをした。


「え…」


 私にウインクしてくれた?


 と思ったのだけれど、周りから「私にウインクしてくれた!」「いや私でしょ!?」と言う声が聞こえてきたので、もしかしたら私も勘違いだったかも…。


「はぁ…」


 気のせいかもしれないけれど、藤宮くんと椿が同時にため息をついた気がした。


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