私の恋がはじまった日
12、あのときの男の子
体育祭の午後の部がはじまった。
午後の競技はリレーや団体種目が多め。
まずは学年別クラス対抗リレーだ。
「おっしゃ!行ってくる!」
気合十分で立ち上がる椿。
「椿、がんばって!」
「おう!美音のために一位取ってくるから、応援してて!」
「う、うん!」
私のため…?クラスのため、白組のためじゃなくて?
私が首をかしげながら椿を見送っていると、前に座っていた桜ちゃんがくるっと振り返った。
「おやおやみおちん。最近三浦くんといい雰囲気ではないですか?」
「いい雰囲気…かな?」
私たちは幼なじみ。それ以上の関係になることなんてあるのかな…?
「美音ちんはそうでも、三浦くんはどうかなぁー?」
桜ちゃんが私の心を読んだかのように意味深ににやりと笑う。
そこに私の隣に座る藤宮くんがぴしゃりと言い放った。
「ただの幼なじみの過保護だろ。恋愛感情じゃない」
私も、多分そうだと思う…。
最近の椿には少しドキッとさせられることもあったけど、私たちはずっと幼なじみで、家族みたいに育ってきた。
椿が私のことを女の子として好きだなんて、そんなことないと思うんだけど…。
藤宮くんの言葉に、桜ちゃんは目を丸くしていた。
「藤宮くんが私たちの会話に入ってくるなんて、超めずらしい!」
さらにその横では、雪乃ちゃんが意味ありげな笑いを浮かべている。
「美音は菅原先輩とも仲良しだよね?」
「ええ?そうかなぁ、たしかに部長とマネージャーだから、よく話してはいるけど…」
仲がいい、と言うには恐れ多いような…?
「美音、モテモテじゃん」
「もうっ!雪乃ちゃんまで!からかわないでよ~」
うるさかったのかな、私たちの会話を藤宮くんはなんだか不機嫌そうに聞いていた。