私の恋がはじまった日

「美音が大変なときにリレーなんか行ってられるか!?」


「椿ってば心配しすぎだよ。私は椿が一位取ってくれた方がうれしいよ?」


 私の言葉に、椿は迷っているみたいだった。


「すげー心配だけど、美音がそこまで言うなら…。ぜったい保健室行けよ?」


「わかってるって」


「結城、早瀬、美音を頼む」


 桜ちゃんと雪乃ちゃんは、こくんとうなずく。


 椿はしぶしぶリレーの準備に向かった。


「みおちん、歩ける?」


 桜ちゃんが心配そうに私を見つめる。


「そんなに心配しなくても、保健室くらい一人で大丈夫!」


 そう元気アピールをした矢先、足首がズキンと痛んで、私の身体はぐらっとかたむいた。


「わっ」


 バランスを崩した私を支えたのは、藤宮くんだった。


「なにが一人で大丈夫だって?」


 呆れたようにため息をつく藤宮くん。


「あ、ありがとう…」


「俺が保健室に連れて行く」


「え?」


 藤宮くんは私を軽々と持ち上げた。


 藤宮くんの腕の中で横抱きに抱えられて、私の体温は一気に上がった。


「ちょ、ちょっと藤宮くんっ!?」


「なに?あんまり動くなよ、危ないから」


「あ、いやそうじゃなくてっ!」


 藤宮くんは平然と私を抱えて歩いて行く。


「キャーお姫様だっこじゃん!みおちんうらやましいっ!」


 桜ちゃんと雪乃ちゃんの声が後ろから聞こえて、あまりの恥ずかしさに私は自分の顔を手で覆った。


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