私の恋がはじまった日

「ほら、着いたぞ」


「あ、ありがとうっ!」


 保健室に到着すると、藤宮くんは私をゆっくりと下ろしてくれた。


 恥ずかしすぎて藤宮くんの顔が見れないっ…!


 私はあわてて保健室内に声をかける。


「先生!いらっしゃいますかっ?」


 しかし中から返事はない。


「あれ、先生いない…?」


 とにかくひざに絆創膏だけでも貼っておきたい。


 もらってもいいかなぁ…。


 私が困り果てていると、藤宮くんがあとから保健室に入ってきた。


「佐藤、ここ座って」


「え?うん…?」


 私は藤宮くんに言われるがまま、近くのベッドに腰を降ろした。


 藤宮くんは私の足を優しく持ち上げると、傷口をぬれたタオルできれいにしてくれた。


「ちょっとしみる思う」


 そう前置きして、私の傷口に消毒液をかける。


 少しひりっと感じたけれど、それも一瞬のことだった。


 手際よく私のひざにガーゼを貼ると、今度は足首にテーピングまでしてくれた。


「え、なんで足首…」


 私、さっき足首を痛めたことって言ったっけ…?


「見たらわかる。足首もひねったんだろ」


 藤宮くんはこれまた流れるような手つきでテーピングを終わらせた。


「藤宮くんすごい!すっごく手際いいね!」


 私が絶賛すると、藤宮くんはそっぽを向いた。


「これくらいだれだってできるだろ」

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