私の恋がはじまった日

 六限目の授業は古典だったんだけど、なんだか全然集中できなかった。


 さっきの藤宮くんと柏崎さんを見て、なにがそんなに引っかかったのか、なんだかずっと胸の辺りがもやもやしてるんだ。


 二人が並んでいる姿が、あまりに自然ですてきだったから。


「はぁ…」


 授業中なのに、思わず小さくため息が出てしまった。


 私はあわてて口に手をあてる。


 よかった、先生には聞こえなかったみたい。


 でも隣の席の藤宮くんには聞こえてしまったみたいで、痛いほどに視線を感じた。


 私がおそるおそる隣を見ると、藤宮くんとばっちり目が合った。


 私はあいまいに笑いながら、ノートに視線を戻した。




「なにかあったのか?」


「えっ!?」


 放課後、帰り支度を整えていると、藤宮くんがそう声をかけてきた。


 藤宮くんはいつも通りだなぁ。わたしばっかりなんだかからまわってるみたい。


「ううん、なにも」


 藤宮くんは私の返事に訝しげに目を細めたけれど、今はうまく話せる気がしなくて、私はそそくさと帰り支度をすすめる。


「今日も部活?」


「うん、そうだよ」


「帰り、待ってる」


「え?」


「俺も今日は委員会があるから遅くなるだろうし、佐藤といっしょに帰りたいから」


「へっ!?え、あ、うん…わ、わかった…」


 藤宮くんはいつもどおり、なんてことないみたいに教室を出て行った。


混乱する私を残したまま……。


「………」


 ふ、藤宮くんといっしょに帰るの?今日?!


 心の準備なんてまったくできないまま、私は部活動を終えることになるのだった。


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