私の恋がはじまった日
「私、藤宮くんのことが好きですっ!」
思い切って「好き」という言葉を口にしてしまうと、なんだか今まで閉じこめていた気持ちがあふれていくみたいに、言葉がぽろぽろと口をついて出る。
「優しくて、いつも私を助けてくれて。からかわれることもあるけど、それは照れ隠しなんだって、むかしから知ってるよ!あのときの男の子が藤宮くんだって知れて、また会えてすっごくうれしかった!」
藤宮くんといるとドキドキするけど、それと同じくらいいっしょにいて楽しいし、落ち着くんだ。
「私、藤宮くんが好き!離れてしまっても、ずっと好きです!」
私は藤宮くんにこの気持ちが届きますように、と願いながら言葉を紡いだ。
藤宮くんは驚いたように目を見開いていた。
それから私を、愛おしそうに強く抱きしめる。
「俺も佐藤が好きだよ。あのときから、ずっと…」
「うん…うん…っ!」
私の頬を大粒の涙が伝う。
気持ちをしっかり伝えられた安堵感。
それと、また藤宮くんとお別れしなくちゃいけないんだってさびしさ。
「私、ぜったいに連絡する!手紙も書くし、スマホだって買ってもらうから…!」
藤宮くんは私の頭を優しくなでてくれた。
しかしそれが不意に止まって、「ん?」と藤宮くんが首をかしげた。
「佐藤、なにか勘違いしてないか?」
「……へ?」
「俺、佐藤と離れるつもりないけど」
「え、……え…?」
藤宮くんがなにを言っているのかわからなくて、私は首をひねるばかりで。
「だって、また引っ越しちゃうんだよね…?」
クラスの子の噂だけじゃない。
さっき藤宮くんの口からもはっきりと「引っ越す」と聞いたのだ。