私の恋がはじまった日
16、俺の想い
佐藤はあれから、恥ずかしそうにうつむいたまま歩いている。
急にキスしてしまったこと、怒っているんだろうか…?
だってしかたないだろ。
佐藤があまりにかわいかったから。
俺はあのときからずっと、佐藤のことが好きだった。
そう、小学一年生だった、あの日から。
あの日、本当は遠回りをして帰っていたんだ。
家にすぐに帰りたくなくて。
小学校に入学したばかりだというのに、すぐに転校が決まった。
理由は仕事上転勤の多い父親のせい。
せっかく少し仲の良い友達も学校にできて、なんとか楽しそうにやっていけそうだと思ったときだった。
それなのに転校だなんて。
幼稚園のときもそうだった。
仲良しの友達ができて、少し幼稚園に慣れてきた、というところで引っ越し。
決まっていつもそうで、今回は早々引っ越さないって言ってたのに…。
引っ越しの話を父にされたばかりで、俺は不貞腐れてた。
そんなときだった。
佐藤と出会ったのは。
なにかを必死に探しているみたいで、自分の服が汚れるのもかまわずに草むらを探し続けていた。
なにを探しているのか知らないけど、俺には関係ない。
そう思って最初はそのまま通りすぎた。