私の恋がはじまった日

「まだ探してるのか」


「う、うん…」


 彼女は俺をびくびくしながら見ていた。


 なにをそんな小さな身体で、必死に探しているというんだろう?


 俺は彼女に興味を持ってしまった。


「えっと…なにしてるの?」


「なにって、お前のなくしものを探してるんだろ」


 俺がそういうと、彼女はまた俺にきらきらしたきれいな目を向けた。


「え?手伝ってくれるの?」


「俺、ここ通学路なんだよ。毎日毎日、お前が目につくって言うか、鬱陶しいから、さっさと見つけるぞ」


 俺の言葉に彼女は飛び上がりそうなほどに喜んだ。


「ありがとう!」


 その明るい声と、まっすぐな言葉に、なぜだか俺の方が恥ずかしくなった。


 変な話だ。


 いつしか彼女と落とし物探しが、俺の中ですごく楽しい時間になっていたんだ。


 また引っ越しと転校が決まって、俺はなにもかもめんどうに感じていた。


 けれど彼女と過ごすうち、彼女のむだに明るい性格がうつってしまったのか。


 今の学校でも最後まで楽しくすごそう。


 そう前向きに明るく思えるようになったんだ。


 彼女には、他人(ひと)をも明るくする、そんなパワーがあると思った。


 俺は日に日に彼女にひかれていった。


 そしてあの日がやってきた。

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