私の恋がはじまった日
「あったぞ」
「え?」
彼女の探し物が見つかった。
彼女はこっちが驚くくらいに、それはもう喜んでいた。
「本当だっ!ありがとう!私が探してたキーホルダーだよ!!」
ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ姿が、とてもかわいらしかった。
彼女はそれを大事そうにぎゅっと抱きしめた。
今日でちょうど最後だった。
俺はもう明日、この街を出てしまう。
彼女の探し物が見つかって、本当によかったと、心から思った。
俺も彼女みたいに、大事なものをずっと大事にしていこうと思った。
転校するのはもちろん嫌だ。
けれど、新しいところでも、なんとかやっていけそうな気持ちになっていた。
「ねえ、もうここで会うことなくなっちゃう?また会える?」
彼女が不安そうにそう尋ねてきた。
もう会えない。だって俺は明日、この街にはいないから。
俺は本当のことが言えなかった。
彼女のさびしそうな顔を見たくなかったから。
「会えるだろ。お互いここが通学路なんだし」
そう嘘をついてしまった。
「そっか!」
彼女はまた明るい表情に戻って、俺に笑いかけた。
「私、きみのこと大好き!これからも友達でいようね!」
俺は返事ができなかった。
俺もきみが大好きだ。
きみに会えてよかった。