私の恋がはじまった日
俺は横を歩く佐藤の頭を乱暴になでた。
すると怒ったようにくちびるをとがらせる。
「な、なにするのっ藤宮くん」
怒ったみたいな口調ではあるけど、照れているのがばればれだ。
感情表現が相変わらずストレートでわかりやすい。
そういうところもすごくかわいいと思う。
「俺もついてこないかって、本当は両親に言われてたんだ」
「えっ!?」
佐藤は戸惑ったように瞳を揺らす。
あんまりからかってもしかたがないから、この話はさくっと流そう。
「でも俺は、ここに残りたいって言ったんだ」
「どうして…?」
わかっているのかいないのか、佐藤はそう尋ねてくる。
そんなの決まってるだろ。
「佐藤と離れたくないから」
俺の言葉に、佐藤はまた顔を真っ赤にする。
「俺とずっといっしょにいてくれるんだろ?」
佐藤は照れたように、それでも明るく笑った。
「……うん…!」
手を握ると、一瞬強張ったものの、彼女もゆっくりとつないでくれた。
彼女の隣を、俺はもう二度とゆずるつもりはない。
この手を一生離さない。
佐藤の隣にいるのは、明日も明後日も、この先ずっと、俺だけだ。