騎士団長の一途な愛は十年目もすれ違う
「お疲れ様です! クレイグ団長!」
「お疲れ様ですっ!」
「ああ、今からよろしく頼む」

 新人の騎士たちと入れ替わりにクレイグは出て行った。その背中を新人騎士たちは羨望の眼差しで見送る。
 廊下の天井すれすれの高い背に筋肉質な体付き、短く切り揃えられたダークブルーの髪、意志の強い瞳や整った鼻梁は男から見ても憧れの対象だ。
 二十五歳という若さで第三騎士団の団長を任されている。

「そういえば団長っていつも休みの日は何しているんだろう、宿舎にはいなんだよな」
「女性に会いに行っているという噂がある」
「ええっ、まさか娼館へ?」

 新人二人が噂していると、後ろにいた副団長がくつくつと笑いをこぼした。

「し、失礼しました」
「いいよ。クレイグが休暇のたびに女に会いに行ってるのは事実だから。王都までね」
「王都……ですか?」

 騎士は目を丸くする。クレイグが団長を務める第三騎士団の宿舎は王都まで往復するだけでほぼ一日潰れる。

「恋人が王都に住んでいるからね」
「しかし団長の休暇はいつもたった一日ですよね。王都まで行って帰ってくるとなると身体を休める暇もないじゃないですか」
「こちらに屋敷を建てて、恋人を呼び寄せたらいいのでは……。僕たちと同じ宿舎に住まなくとも」
「でもそれほど大事にしている恋人がいるのも素敵ですね」

 尊敬する上司の新たな情報に新人騎士たちはますます感心したようにうなずき、
「真面目過ぎるのもどうかと思うけどね」副団長はため息をついた。

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