騎士団長の一途な愛は十年目もすれ違う
「なるほど、クレイグが恋人にベタ惚れなのはわかった。だけど、それで恋人はいいのか?」
「いいとは……?」
「もっと一緒にいたいとか、恋人は思っているんじゃないか?」
副団長が訊ねると、クレイグは納得したように頷いた。
「……そうか。それでか」
「なにが」
「恋人が結婚したいと言っていた」
「ほらー、やっぱり寂しがらせてるじゃないですか!」
「しかも付き合いも長いんだろう」
「長いんですか、付き合い」
団員が唇をとがらせて、副団長も呆れた目を向ける。
「十六の時からだな」
「もう九年経つじゃないですか、九年の間数分しか会ってないんですか?」
「いや、それはここに所属されてからだから、四年だな」
「同じようなもんですよ!」
皆が非難の声を上げるから、クレイグもようやく顔をあげた。
「……では急いだほうがいいんだろうな」
「急ぐと言わず、次の休みにでも言ったらどうだ。次は休暇数日取るといい」
「いや……やらなくてはいけないことがある」
「何をやるか知らないが、女性心というものも学んだほうがいいのではないか」
「そうですよ。俺、全然団長には適いませんけど、女性との付き合いは団長よりうまい自信ありますね」
「子どものほうがよっぽと恋愛してますよ」
「それでは学ばせてもらおう」
クレイグは素直にメモを持ち、学ぶ体勢になった。
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