騎士団長の一途な愛は十年目もすれ違う
 クレイグは校舎を出ると、学校の外れに繋いでいた馬の綱を取る。
「待たせたな、帰るか」
 律儀に馬に一言かけて飛び乗ると、まっすぐ王都を出て行く。
 
 数時間かけて詰所に戻ると、勤務を終えた副団長も帰ってきたところで、馬から降りたクレイグに訊ねる。
 
「今帰ったのか?」
「ああ」
「もう少し休暇を取ったらどうだ。向こうでもろくに滞在できないだろうし、身体も休まらない」
「今は時間が惜しい。明日は書類仕事だ、問題ない」
「恋人も待ちわびてるんじゃないか、お前からの求婚を。こっちで屋敷を建てて暮らせばいいじゃないか。宿舎で生活せずとも」

 クレイグは軽く首を振り、
 
「いや、大丈夫だ。どちらにせよあと一年は求婚も出来ない」
「ふうん? まあ、体調には気をつけろよ。じゃあ俺は帰るから」

 副団長はひらひらと手を振って、自分の屋敷に帰って行った。

「……約束の十年まであと一年なんだ」
 
 彼の後ろ姿を見送りながら、クレイグはそう呟いた。

 *

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