騎士団長の一途な愛は十年目もすれ違う
「それでこんなにたくさん届いたのね」
「ここまでとは思っていなくて……。困っているのよ」

 放課後の医務室で、友人とチェルシーは大量の書類の前で困惑の表情を浮かべていた。
 両親に「結婚をしてもいいが、相手はいない」と言えば、たくさんの男性の情報が綴られた書類がたんまりと送られてきた。こういうことに張り切る親戚がいるらしい。
 それに両親だけでなく、なぜだか学校長まで話を聞きつけて書類の量に加勢した。

「誰か気になる人はいた?」
「文字ばかり眺めていてもよくわからないわ……実際にお会いしてみないとなんとも」
「どうするの? クレイグみたいな人もいるんじゃない?」
 
 チェルシーは一枚ぺらりとめくってみる。文字の羅列ではどんな人か何もわからない。

「似ている人よりもいっそまったく違う雰囲気の人がいいかもしれないわ」
「そうかもね」
「これを眺めていてもよくわからないし、学校長が一番お薦めしてくださっている方と会ってみようと思うの」

 チェルシーは紙をかき集めてひとまとめにして、紐でまとめていく。

「いいの、本当に?」
「私だけが好きでもね。いっそのこと早く結婚でもしてくれたら諦めがつくのに」
「たしかにね。ずっと付き合ってるみたいなのに、どうしてまだ結婚しないのかなあ」
 
 友人が首をひねったところで、医務室の扉がノックされてクレイグが入ってきた。
 チェルシーは慌てて紙を自分の背に隠した。なんとなく見られたくはなかったのだ。

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