秘密の恋〜その相手は担任の先生!〜

夏休みの予定


 それから何日か経って七月に入った。梅雨が明けると蒸し暑い日が続き、流石の私でも若干バテてます……

「あ~つ~い~!」
「そりゃ夏だからね。」
「桜~……あんたは涼しい顔して暑くないの~?」
「暑いよ~」
「汗一つかいてないじゃん。」
「確かに汗はかきにくいけどね。」
 やっぱり可愛い子は汗はかかないんだな~
 なんて思ってたら教室の外から名前を呼ばれた。
「風見さん。」
「え?あ……」
 そこにいたのは高崎先生だった。先生は私と目が合うと手招きした。
「あ……っと、ごめん桜。ちょっと行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。」
 笑いを堪えながら桜が手を振る。それに苦笑いを返し、先生の方に向かった。
「何ですか?」
「ちょっといいですか?」
 先生は私を廊下に出すと切り出した。

「もうすぐ夏休みですね。一学期の間はHR委員長として色々と助けて頂き、ありがとうございました。」
「い、いえ…そんな……」
「二学期も引き続きお願いしたいのですがどうですか?」
「え?あ…もちろん私はそのつもりでいましたよ?というか、一年間通しての委員長ですよね?」
「そうなんですが、一応聞いておこうと思いまして。」
「言ったじゃないですか。最後までやり通すって。女に二言はありません!」
「それを聞いて安心しました。」
 心底ホッとしたような顔で言う。
「ところで風見さんは夏休みは予定あるんですか?」
「え?別にこれといっては。桜と海行ったりお互いの家で遊ぶ以外は予定という予定はないです。」
「そうですか。」
 顎に手を当てて考え込む先生。私は何故急にそんな事を言ってきたのか戸惑った。

「夏休みの間十日ほど、補習があるのは知ってますよね?」
「はい。確か期末テストの結果、赤点の生徒が受けなきゃいけないっていう……」
「そうです。まだ日程は決まってないんですが、八月の前半を予定してます。」
「で……その補習がどうしたんですか?」
 何だか嫌な予感を抱きながらも聞くと、先生は申し訳なさげに口を開いた。
「実は、その補習のお手伝いをして頂きたいのですが……」
「……やっぱりそうきますよね~」
 予感が的中してちょっと落ち込む。でもこれって自分の気持ちを確かめるチャンスなんじゃ……

「あ!やっぱりせっかくの夏休みに学校に来て仕事なんて嫌ですよね……」
「え!あ、いや……別に嫌という訳じゃないです。」
「本当ですか?」
「はい。」
「良かった!今回は全クラスの委員長に頼んで来て貰うように校長先生に言われてたので。担任も全員強制参加だから若い先生方は休みが十日も潰れるって泣いてました。」
 そう言って苦笑いする。私もつられて笑った。
「先生だってまだ若いじゃないですか。私達とはそんなに離れてないでしょ。」
「ちょうど十歳です。」
「ほら、まだ若いですよ。」
 私が言うと、『そうですね』と返ってきた。

「HR委員長は各クラスに一人だけなんで、できればもう一人くらい助っ人が欲しいんですが。風見さんの方から誰かに声をかけてみて下さい。あ、強制ではないので無理しなくても良いですよ。」
「助っ人ですか。ん?」
『助っ人』と聞いて真っ先に思い浮かぶのは桜だ。でも桜引き受けてくれるかな~
 と思った瞬間、閃いた!
「先生!」
「な、何です?」
「さっき担任は強制参加って言ってましたよね?」
「はい、言いましたが……」
「藤堂先生も来るって事ですよね!?」
「そうですよ。一番張り切ってますが……」
「やった!これで釣れる……」
「釣れる?」
「先生!ありがとうございます!」
 無理矢理握手をすると、私はそのまま教室へとダッシュした。
 この話を聞いた桜が即座に首を縦に振ったのは言うまでもない……

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