秘密の恋〜その相手は担任の先生!〜

急展開


 一夜明けて……

「ホントに感謝だわ~!千尋。あなたにこんなに感謝したのは初めて!」
「桜……嬉しいけどその台詞何度目?」
「今から夏休みが楽しみ~♪」
「はぁ~……」
 夏休みの補習の話、こんなに喜ぶとは思ってなかった。どんだけ藤堂先生の事好きなのよ……
「でも自分が補習受ける身になったら意味ないんだよね。テスト勉強頑張らないと!」
 私が言うと、桜も同意した。
「確かに!手伝いどころじゃないね。まぁでも私は余裕だけどね。」
「くっ……!」
 余裕綽々な笑顔に軽い殺意を覚える。それでも机に突っ伏しながら恥を偲んで頼んだ。
「桜……一生のお願い。」
「なぁーに?」
「勉強教えて~~~!」
「ガッテン承知!」
 頬が緩みっぱなしの桜と、必死な顔の私。期末テストまでのこの数日は史上最悪の日々になりそうである……



 昼休み、私は職員室に来ていた。補習の手伝いに桜が参加する事を高崎先生に伝える為にだ。
「高崎先生~」
「あ、風見さん。どうしたんですか?」
 入口のドアの所で呼ぶと廊下まで出てきてくれる。私はニコニコしながら言った。
「夏休みの補習の手伝い、桜も来れるそうです。」
「そうですか!一人でも人手が欲しかったので助かります。大神さんにもお礼を言わなきゃですね。」
 嬉しそうに微笑む先生を見て私も嬉しくなる。
「でも自分が赤点取ったら仕事どころじゃないですよね…。勉強頑張らなきゃ!」
「風見さんは心配しなくても大丈夫だと思いますよ。赤点取った事なんてないじゃないですか。」
「いや~…二年になって英語とか難しくなってて。中間テストもギリギリだったんでちょっと心配……」
「大丈夫ですよ。風見さんは頑張り屋さんだから。」
「せん……」
「おう!千尋!」
「え?」
 誰かが後ろから肩をポンッと叩く。男子の声だ。誰だろう?男子で私を呼び捨てにする奴は……
「あ!雄太君。」
「よう。」
「どうしたの?あ、職員室に用事?それとも高崎先生に?」
「いや、お前にちょっと話があって。」
「私?」
「先生。ちょっと千尋借りるよ。」
「あ…はい……」
「え?ちょっと…引っ張らないでよ。」
 雄太君は私の手を取り、半ば無理矢理連れていく。途中で先生の事を思い出して後ろを見たけど、もう既に職員室に入ったようで姿はなかった。

「ちょっと!何の用なの?無理矢理引っ張ってきて。先生に失礼じゃない。あんな態度……」
「俺はただ…先生と仲良くしているお前を見ていたくなかったから……」
「え…それって……」
「…そういう事。俺お前の事が好きなんだ。」
「………」
「さっきはつい名前で呼んじまったけど……千尋ってずっと呼んでみたかった。……付き合ってくれないか?」
「ご…ごめんなさい!」
 私は勢いよく頭を下げて逃げた。

 雄太君がまさか私の事を好きだなんて……思いもしなかった。雄太君とは冗談言い合ってたけどあの顔は本気だ。
 でも彼とは喧嘩仲間というか気の合う友達って感じで。
 そりゃ、ああ見えて優しい所あるし、運動神経もあって気さくで一緒にいて楽だけど……
 少しだけ、ほんの少しだけ、雄太君に対してそういう気持ちになった事はあったけど……
 今は違う。どういう訳で違うのかまだよくわからないけど、雄太君から告白された時頭に浮かんだのは……
 どこまでも優しい、どこまでも柔らかい空気で私を包んでくれる――
 先生の顔だった……

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