秘密の恋〜その相手は担任の先生!〜
最終章 卒業に向けて
無事に進級
――四月
それから数ヶ月が過ぎ、私達も晴れて三年生。
クラス替えもなかったからクラスメイトも二年の時と同じ面子だし、担任も変わらないしで最高♪
「い~や~だ~!私は二組がいいの!誰か交換して~!」
あ、ここに約一名問題児が……
「桜……落ち着いて!しょうがないでしょ?ねっ?」
「でもでも、私だって最後の一年くらい楽しく過ごしたいもん!」
桜が駄々っ子のように首を振る。私は額に手を当ててため息をついた。
と、そこへ高崎先生登場。
「大神さん……そんなに言われると僕も少し傷つくんですけど……」
「あ!先生!先生からも言って下さいよ。あのハゲ校長に!」
「な、何をですか?」
桜の剣幕に後ずさりする先生。一方桜は鼻息荒くして詰めよっていった。
「私を三年二組にしてくれって!」
「そ…それはちょっとむ…り……」
「えー!何で~?」
「と、とにかく教室の中へ入りましょう。」
「嫌です!」
「こら!高崎先生の言う事聞けよ、桜。」
「藤堂先生!」
天の助け!……と思ったのも束の間。
「言う事聞かないと今度の日曜日のデートなしにするぞー!」
「……はーい。良い子にしま~す。」
リア充か!……っつうか普通の声量でそんなギリギリトークするなよ!
私と高崎先生の二人は慌てて辺りを見回したが、入学式と始業式が終わったばかりの時間のせいで廊下は結構煩かった。そのお陰で誰も今の会話を聞いた人はいなかったみたい。ホッと一息ついた時、高崎先生がすぐ隣に来た気配がしたから顔を上げた。
「今年も一年よろしくお願いしますね。」
「こちらこそ。」
「またHR委員長に抜擢してもいいですか?」
「へ?」
驚いて聞き返すと先生がふふっと笑った。
くそっ……何か負けた気分。あ、そうだ!
「やってもいいですけど……」
「けど?」
「公私混同はなるべくしないで下さいね?」
バチンッ!とウインクする。途端先生が固まった。
あ、あれ?変だったかな……
この間桜に教えてもらった通りにやったんだけど……
「せ、先生?」
「もう……」
「もう?」
「もう一度やってくれませんか!?さっきは不意打ちだったんでよく見れなかったんですが、今度はじっくり見たいので。さぁ!(心の)準備はできてます。どうぞ!」
「は……はぁ~!?」
みるみる内に顔が真っ赤になっていく。頭から湯気が出そうだ。
「千尋声でかいよ。」
「そうだぞ。近所迷惑だ。」
あんた達が言うな!
「先生……」
「はい?」
「教室入りません?チャイム鳴りますよ。」
「ホントだ。さあ皆さん!HR始まりますよ~!席について下さ~い。」
時計を指差すと慌てたように廊下にいた面々に声をかける。そしてさっきまでの変なテンションは何処へやら、涼しい顔で教室に入っていった。
「ほら、私達も入るよ。」
「あれ?藤堂先生は?」
「もう隣の教室に入ってったよ。」
「あ、そう……」
こっちもついさっきまで騒いでたのに何もなかった顔をしてしれっと言ってくる。睨んでもどこ吹く風。
「でも何か……」
「ん?」
「ううん、何でもない。」
一人言が出てしまって慌てて口を閉じた。
でも何か、こういう雰囲気嫌いじゃないな。みんなが笑顔でいられてとても嬉しい。
隣のクラスの藤堂先生、親友の桜。大好きな高崎先生。そして私……
この四人で過ごす高校最後の一年。前途多難な予感しかしないけど、とても楽しい時間になる事間違いなし!
二度と戻らない青春を思いっ切り謳歌したいと、この時私はそう思った。