秘密の恋〜その相手は担任の先生!〜
第二章 告白は唐突にやってくる

気合い


――三日後

「だぁぁっっ!」
「お疲れ~」
「桜~…疲れた……」
 教室に入るや否や桜に抱きつき、ため息をつく。そして今通ってきたばかりのドアを睨みつけた。

「まったく……高崎先生ってば私にどんだけ仕事させれば気が済むの……」
「まぁまぁ。それだけ千尋が頼りにされてるって事でしょ。」
「頼りにっていうか、もうほとんど奴隷じゃん……。掲示係の仕事から始まって本の整理、ニワトリ小屋の掃除及び餌やり、花壇への水やり、保健室の救急箱に包帯の補充、ゴミ捨て、黒板のチョークの補充、クラス全員のプリント運び……」
 この数日、先生から頼まれた事を指折り列挙してみる。そして自分で悲しくなった。

「包帯の補充まではわかるよ?まぁギリね。ゴミ捨ては半ば率先して引き受けたからあれだけど。でもチョークとプリントは明らかに先生の職務怠慢でしょうが!自分でやれっつーの!」
「まぁまぁまぁまぁ。」
「何、その心の込もってない慰め方は!」
「でも私が思うに、先生は千尋だから頼んだんじゃない?千尋はまぁこう見えて優しいから、断らないってわかってたんだろうし。もしかしたらHR委員長に抜擢したのもそれが原因だったのかも。」
「はぁ?確信犯だったって事?」
「うん。私はそう思う。」
「え~…あの高崎先生だよ?最初からそこまで考えるかな?私が本の整理までしてあげたから次から次へって感じだったんじゃない?」
「そうかなぁ~」
 人差し指を口に当てて首を傾げる桜。ちくしょう…悔しいけど可愛い。私はますます抱きついた。
「さくら~!」
「はいはい。」
 ポンポンと背中を叩く桜の手が心地いい。荒くれた心が綺麗に洗われた気がした。

「ありがとう、桜。千尋、復活しました!」
「良かった、良かった。」
「そういえばさ、自分の事でいっぱいいっぱいで忘れてたけど、あの時藤堂先生と二人きりでどんな話したの?」
「あの時?」
「ほら、私達が早く来た日。私が藤堂先生と二人にしてあげたじゃん。あの後どうなったかまだ聞いてなかったから。」
「あぁ、あの時ね……」
 急に落ち込んだ声になる桜に驚いて体を離すと、顔を覗き込んで尋ねる。
「どうしたの?ごめん、話したくなかった?」
「ううん、そうじゃないんだけど……」
「桜?」
「千尋~!聞いてくれる?」
「え?あ…うん……」
 今度は桜が私に抱きついてくる。狼狽えながらも頷いた。



――あの時の桜視点

「先生って彼女とかいるんですか?」
 千尋の計らいで藤堂先生と二人きりになった私は、思い切って聞いてみた。
「え?……あー、秘密。」
「あ、もしかしてその反応はいるな?」
「……うん。」
「え……」
 ガーン……自分で墓穴掘っちゃった……っていうか、先生もそこは誤魔化そうよ(泣)
「桜?どうした?」
「別に……何でもないです……」



「という訳なの……」
「そっかぁ、彼女アリか……」
「うん……私、諦めようかな。」
「え?何言ってんの?」
 私はビックリして思わず大きい声を出した。
「だって彼女いるんだよ?もうダメだよ……」
「そんな事言わないで。結婚してる訳じゃないんだから、諦めるのは早いって。」
「そうかなぁ。」
「そうそう。桜は可愛いから頑張ればいけるよ。協力するって言ったでしょ?私に任せて!」
「大丈夫かな、千尋に任せて……」
 私は若干不安そうな桜を励ますように、気合いを入れて拳を振り上げた。

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