あなたくれない

鬱蒼(うっそう)と生える木々の間に目を凝らし、
「琳音っ! 琳音ーっ!」
と、声を出す。



だけど。

琳音の姿は見えない。

返事も、返ってはこない。



ザワザワと、木々だけが揺れる。




その時。




……パキンッ!




音がした。




「!?」




木の枝が折れた音だと気づく。

でも。

私の足元に、木の枝は、ない。





「琳音?」
と、辺りをキョロキョロと見回した。




「琳音、琳音! いるの!?」




どうか、お願い。

琳音、無事でいて。

私の前に現れて。



怒っててもいいよ。

もう一度私に、仲直り出来るチャンスをちょうだい。



だから。

生きていてよ。






……ガサッ!




「!?」



また物音がした。

その方向を見る。




誰かが。

のろのろと、こちらに向かって歩いている。



顔は見えない。

だけど。

私達が通う高校の制服を着ている。
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