あなたくれない

ケンカをしていても。

私には。

琳音の存在は、かけがえのないもので。

それはこの先、きっと変わらなくて。



久しぶりに会えた、私の友達。

泣きそうになるほど、嬉しかった。






「琳音っ、私と帰ろう!」

「……ない」

「?」

「……れない」



琳音が話している、と気づくのに、数秒かかった。

だって。

この声。



(琳音の声じゃない……!!)




明るくて快活な琳音のハッキリした声とは違う。

鈴が鳴るような、高くて細い声。




(どこかで聞いたことがある……)



ここにいるのは、確かに琳音で間違いないけれど。

私は、誰と話しているんだろう?



「……くれない?」
と、言った。



「……っ!!」



私は驚いて。

思わず、琳音の手を離してしまった。



「くれない?」



この声……!!



慌てて、空を見る。




(現象が出ている!!)







「ねぇ、あなたくれない?」






今。

私の目の前にいるのは。








琳音じゃない。

















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