あなたくれない

第五話 憑かれる


その人は、笑っている。

にっこりと。

私に向かって。



赤い輪を持つ、真っ赤な月に照らされながら。



「り、琳音じゃない……」



思わず呟くと。

その人は嬉しそうに私の手をとった。



「ひっ!」



「くれるでしょう? ねぇ、あなたがいい」

「!?」



その人は私の手をぎゅっと両手で握る。



「あなたを探していた。あなたは似ているから」

「!?」

「あはっ! あはははっ!!」



(似ている? どういうこと!?)



その人が両手に力をこめる。



「痛っ!」



握られた手が痛い。



(すごい力……!)



「は、離して……!」



私の目には涙が溢れてくる。



「どうして?」
と、その人はまだぼんやりした瞳で、私を見ている。



「どうして嫌がるの? なんでそんな顔をするの?」

「?」
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