あなたくれない
「え!? ……もう、冗談言わないで」
と、笑ってみせるけれど、内心はドキドキして仕方なかった。
「冗談じゃないかもよ」
と、駿翔くんも笑う。
「また噂になっちゃうよ」
「うん、ごめん。オレのわがまま」
「えっ」
「本当は手、繋ぎたかっただけ」
心臓がドキドキとうるさい。
私って、本当に最低なんだな。
琳音、ごめんね。
意識しないなんて、無理だよ。
私、駿翔くんが好きなんだ。
……本当は、ずっと前から。
駿翔くんは「じゃあな」と、片手をあげた。
私も「またね」と、手を振る。
歩き出して。
でも、振り返ってみると。
駿翔くんがまだ立っていた。
放課後になる時間。
私は家を出て。
雑木林に向かった。
その途中。
集団下校中の小学生達とすれ違う。
「♪返せよ 返せよ
夕焼けの向こう……♪」
小学生達が歌っている唄に、耳を澄ます。
その唄は村で伝わるわらべ唄のようなものだった。
おばあちゃんもお母さんも、もちろん私も歌える。