あなたくれない
(今思うと、不思議な歌詞だなぁ)
雑木林へ向かいつつ、小声で歌ってみる。
「♪返せよ 返せよ
夕焼けの向こう
暗がりの中を
駆けてゆけ
みなでゆくぞ
お前のところ♪」
……一体どんな意味があるんだろう?
短調で物哀しいメロディーがどことなく美しくて、子どもの時は好きな唄だったけれど。
(『返せよ』って、何を?)
そんなことを考えつつ歩いていたら、雑木林に着いてしまった。
渡された四つ折りの紙には、『雑木林に来て』としか書いていない。
雑木林には、川のそばの出入り口と、墓地のそばの出入り口がある。
雑木林のどことは書いていないから、私は村の人がよく使う、川のそばの出入り口で琳音を待つことにした。
しばらくして。
琳音がひとり、やって来た。
ものすごく仏頂面で。
(すごく怒っている時の顔だ)
思えば十六年、一緒に過ごしてきた。
泣き虫で。
いつも誰かしらに泣かされていた私。
でも、いつだって。
琳音がそばにいてくれた。