あなたくれない

「あの、米子さん……っ、お願いだからちゃんと教え……」



言い終わらないうちに。

米子さんの視線がまた辺りに動いた。

そして。



「唄は嘘を言わないんだよー。真実だよー」
と、また元の口調に戻る。



(何!?)



不思議に思っていると。

お母さんが家から出て来て、私達のそばにやって来るところだった。



「穂希っ、救急車呼んだから! 警察も来るみたいよ! ……あれ、母さんは!?」

「原西の家の人に、知らせに行った」

「米子さんとあなたを二人にしたの!?」



お母さんが思わず言ってしまった、とばかりに、慌てて口を閉じる。



「何もしない。何もしないよー」
と、米子さんは笑っている。




今まで通りの、風変わりな米子さんだった。




(さっきの米子さんは……?)



しっかりした眼光で。

話し方も、どこか厳しさのある感じだったのに。



(米子さんは、風変わりを演じている……?)
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