あなたくれない
米子さんは焦ったそうに「わからない?」と、言ってから、
「“くれない様”は、肉体を欲しているのよ」
と、続けた。
「体という、実体が欲しいの。だから返事をすれば取り憑かれてしまう。体は“くれない様”のものになってしまう」
「あっ……」
と、私には思い出したことがあった。
「どうしたんだよ?」
駿翔くんが私を見た。
「琳音、返事していた……」
「えっ?」
「“くれない様”が目覚めたあの日、あの洞窟で……、琳音は言葉を返していた!」
“くれない様”が呟いたんだ。
『ねぇ、くれない?』って。
そしたら琳音は言った。
『そこにいるの!?ねぇ、“くれない様”なんでしょう!?』
確かにそう、言っていた。
『早く願いを叶えてよ!!』
と、笑い出した琳音に、“くれない様”はこう言った。
『……返事が、あった……』
ゾッと背筋が凍った気がした。