あなたくれない

答えてはいけなかったんだ。

あの言葉に。

返事をしては、いけなかった。



だけど、琳音は言葉を返した。

だから捕まった。

取り憑かれてしまった理由は、それかもしれない。



「琳音……、どうなるんですか?」



駿翔くんが心配そうに米子さんに尋ねる。



「わからない。その子は……、もう諦めたほうがいいかもしれない」



「!!」




「そ、そんな! 諦めるなんて出来ませんっ」
私が強い口調で言うと、
「あなたを呪った相手なのに?」
と、米子さんは言った。



「その子がくれない様に憑かれているなら、もう帰ってこないと思ったほうがいい。時間だって経っているから、その子自身の体力だって限界にきていると思う」

「琳音は、あたたかな手をしてました。生きているんですよね?」



涙声で、私は米子さんにすがるように言う。

米子さんは顔色ひとつ変えずに、
「取り憑かれた肉体だからあたたかい可能性もある」
と、容赦ない言葉を返してきた。
< 136 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop