あなたくれない
「そんなこと、思っていないよ」
「はっ、どうだか!」
琳音は雑木林の中へ入って行く。
「あんたもついて来て」
「……でも、雑木林の奥には行かないほうが……」
「なんで?」
「雑木林の奥には洞窟があるでしょう? そこには近寄っちゃいけないって、おばあちゃんが……」
立ち止まったまま動かない私に、
「いいから早く来なよ!!」
と、琳音は怒鳴る。
私は半べそをかきながら、琳音の後を追った。
琳音の後ろ姿を見つめつつ。
戻れないのかな、と思った。
私達の関係は、数日前のようにはもう、戻れないのかなって。
雑木林の奥に進むにつれ、不安と心配な気持ちが胸の真ん中をぐるぐる回っているみたいに感じる。
「穂希」
と、琳音が振り返らずに呼んだ。
「何?」
「私、本気なの。駿翔くんのこと」
「……うん」
「あんたが裏切ったこと、体中の血液が沸騰するみたいに怒ってるから」
「……」
琳音は足を止めた。