あなたくれない
「そうだね。何が起こるのか、私にもわかんない。でもさ」
と、琳音は言葉を切って、私を見つめた。
そして言った。
「願いを叶えてくれる噂話、流行ってるじゃん」
頭の隅で、駿翔くんが教えてくれなかった噂話とはこのことなのかな、と思った。
琳音はそれに気づくはずがなく、
「私さ、駿翔くんと付き合いたいんだ。恋人として、隣にいたいの」
と、私のほうへ近寄る。
二、三歩離れた場所で止まり、再び笑顔を見せた。
「協力してくれるよね? “くれない様”にお願いするの、見届けてよ」
「え?」
「穂希が証人になって。それで願い事が叶ったらさ、あんたも何か願えばいいじゃん。その時は私、協力してあげる」
「……」
「するの? 協力。……するよね? 穂希が言う通り、あのことが私の誤解なら、出来るよね?」
琳音はそう言って、さっさと洞窟へ入ってしまう。
「琳音、危ないよっ」
声をかけても、琳音からの返事はない。
腹をくくるしかない。
そう思って、私は。
琳音の後に続いた。
それがあんなに恐ろしい事態に繋がるなんて…………。