あなたくれない
第二話 目覚める
洞窟の中。
まだ薄っすら明るかった空には、太陽だって見えたのに。
この中には光が入らないのか、薄暗い。
洞窟の奥。
壁伝いの、中央。
小さな祠がある。
「これが、“くれない様”?」
琳音は祠に近寄り、しゃがむように中を覗き込む。
「り、琳音、帰ろうよ」
「は? あんた、私をひとりにする気?」
「違うけど」
「本当、薄情だよね」
琳音がため息を吐く。
「ほら、穂希、見てみなよ。“くれない様”がいるよ」
「私はいいよ」
「いいから、見てみなって」
琳音がこれ以上不機嫌になるのは避けたかったから、恐るおそる私は祠に近づく。
しゃがんで、中を覗くと。
そこには日本人形がいた。
「ひっ!」
「ビビりすぎだって」
汚れて、何の柄なのかわからない着物を着た、キレイな顔つきの女性の人形。
日本人形の前には、火が灯った太くて大きなろうそくが、二本置いてあって。
祠の中を赤く照らしていた。