あなたくれない
「キレイな人形だよね」
と、琳音は言う。
私は頷きつつ、鳥肌が立つ。
キレイだから。
余計に怖いよ。
「“くれない様”ってこんなにキレイな人なのかなって思うとさ、怖くないって思えるじゃん」
「えっ、う、うん」
少し驚いて、琳音の顔をまじまじと見てしまった。
(琳音の優しさだったんだ)
怖がる私を気遣ってくれたんだ。
誤解して、怒っているし。
話は聞いてくれないけれど。
琳音は、優しい。
子どもの頃からずっと。
「何?」
と、琳音が眉をひそめる。
「ううん、何でもない」
「あっそ。……穂希さぁ、本当に知らないの? “くれない様”の噂」
「聞いたことがないよ」
琳音がもう一度、祠を覗き込む。
「“くれない様”の祠の中の、このろうそくの火を消すんだって。そしたら“くれない様”が目覚めるらしいよ」
「……え、それだけで目覚めるの?」