あなたくれない
米子さんは、淡々と話している。
「そして政一は夕子の遺体をわざわざ雑木林に祠まで作って祀っている」
「村から何も言われなかったのかな?」
「目立つものね。だけど村から何か反対があったようなことは、どこにも書いていない。大橋 寛一ですら、何も」
「……夕子を殺害した犯人のことは隠すのに、夕子が死んでしまったこと自体は黙認される感じですね」
だから祀ったところで、誰も反対しない。
それどころか、村では“くれない様”を受け入れて、その怒りを鎮めるために今でも火の番をしている。
「黛 夕子はそれだけ嫌われていたし、それだけ恐ろしい存在だったのかもしれないね」
「じゃあ、米子さん。あのわらべ唄の三番は?」
「政一が後から足したのよ。もともとは二番までの唄だったのに、政一が三番の歌詞を広めた。“くれない様”を定着させたかったのかしら」
「……」
恐ろしい人だと思った。
黛 夕子はもちろん、政一も成次郎も。