あなたくれない
琳音は頷く。
「ここってさ、風が通らないじゃん。だけど厳重に風除けのカバーもされてるし、滅多に火が消えることはないのかもね」
「……消していいのかな」
「目覚めさせたいんだもん。消さなくちゃ」
と、琳音が不機嫌な声を出す。
「穂希も知っているでしょ? 村の大人達が交代で、洞窟の見回り当番をしていること」
「うん。うちはおばあちゃんやお父さんが当番に行ってる」
「それ、この火を絶やさないようにしているんじゃない?」
琳音の瞳がろうそくの炎に照らされて、妖しく光る。
「信憑性があると思わない? 絶対に消しちゃいけないんだよ」
「琳音……、やめようよ」
と、私は後ずさった。
「なんで? 願い事を叶えてくれるんだよ? いいじゃん。何がいけないの?」
「だって、怒られるよ。大人は“くれない様”を目覚めさせないために、火の番をしているんでしょう?」