あなたくれない

「……そうね」
と、米子さんは小さな声で言う。



「黛の家に生まれたってだけで、私は生きづらかった。ずっとつらかった。だけど、祖父や曽祖父はもっと悲惨な出来事を経験している」

「……」

「私が黛 夕子を殺せるなら、喜んでやり遂げる。……わかる? 私にだって恨む気持ちはあるのよ」



「……米子さんが風変わりな人を演じている理由は、そこにあるんですか?」

「……」

「黛家の人間だとわかると、生きづらいから?」



そう言う私に、米子さんは笑顔を見せた。

その笑顔は、悲しくてたまらない、という表情に私には見えた。



「穂希ちゃんには感謝しているの。私が黛家の人間だとわかっても、こうして話してくれる。黛 夕子の子孫だと知っても、変わらず接してくれる」

「それはもちろん。だって、米子さんは米子さんだから」

「そう思えない人もいるのよ」



米子さんは俯く。
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