あなたくれない

現象が出ている!



「来る……っ、“くれない様”が、やって来るんだっ!」



急激に鼓動が速くなってくる。

はぁ、はぁと、口で息をしてしまう。



「……ない」

「!!」



鈴のような、高い声が聞こえる。



「もう、いらない……」



後ろを振り向くと、その人が立っていた。



琳音の体の中から、“くれない様”が、私を見ている。

そして、ニィッと口角を上げた。



「いらない、いらない、いらない……」



じりじりと近づいてくる!



「きゃあぁああぁっ」



恐怖から、声を上げて走った。



(早く逃げなくちゃ!)



だけど私の足は震えていて、思うように走れない。



(今度こそ殺される!)



もつれる足で。

なんとか走るけれど。

私はすぐに転んでしまった。



「あなたを殺す……、あなたはいらない、もういらない!」
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