あなたくれない

どうしてもこの場から早く離れたい。

気づけば、後ずさった足は。

洞窟の入り口付近まで来ていた。



「……は?」
と、琳音。



険しい目つきで、私を睨んでいる。
 


「何なの、あんた。さっきから、何言ってんの?」

「え?」

「そんなにあたしが駿翔くんの彼女になるのが嫌なわけ?」

「違う、違うから」



琳音は不機嫌を顔いっぱいに広げて、
「……駿翔くんは、渡さない」
と、低い声を出す。



「あんたなんかに、駿翔くんは渡さない。あたしがいなくちゃ、何も出来ない弱虫のくせに……っ、なんで、なんで、あんたなんか……っ!!」



琳音の声が大きくなっていく。



「ごめ、ごめん! 琳音!」



謝ったら、琳音はますます怒ってしまった。



「は? 何が『ごめん』なの!? あんた、いっつもそうやって謝るけどさ! 本当に申し訳ないと思ってんの!?」

「ごめん……っ、ごめんなさいっ!!」

「あんたの『ごめんなさい』は聞き飽きたんだよッ!! そんな軽い謝罪なんか、要らないんだよッ!!!」
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