あなたくれない

(あれは!!)




咄嗟に“くれない様”の腕を引っ張り、勢いよく駆け込んでくる米子さんとぶつかったのは、私のお腹だった。



「うっ!!」




お腹に衝撃的な痛みが走る。




米子さんは驚き、
「穂希ちゃん! どうして!!」
と、私を見ている。



米子さんの手にあったのは、包丁だった。

赤い私の血が、ポタポタと刃先から地面に滴り落ちる。



「琳音を、傷つけないで……!」




「穂希!!!」



おばあちゃんもお父さんもお母さんも、私の名前を叫び、駆け寄って来ようとする。



「待って! 来ないで!」



私は三人に手のひらを向けて、こちらに来ないように制止した。



「あはっ、あはははっ!」
と、“くれない様”は嬉しそうに笑っている。



“くれない様”は、
「あなたのことを気に入ったわ」
と、米子さんを見た。



米子さんはキッとした瞳で、“くれない様”を睨む。
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