あなたくれない
終章 それから

「ねぇ、私達の住んでいる内日暮村に“くれない様”って、祀られてた人がいたんだって!」

「あっ! 知ってる!怖い人なんでしょう?」

「すっごい怒っているって」



小学校の教室で。

女の子達の噂話に、ひとりの男の子が耳を傾けている。



男の子は家に帰ると、
「お母さーん!」
と、台所に走って行った。



キッチンカウンターにあったおやつを手に取る男の子を見て、
「おかえりー! あっ、ちょっと、帰ったら手洗いうがいでしょ!?」
と、男の子の母親が慌てる。



「ねぇ! 本屋さんのおじいちゃんが言ってたんだよ! 昔、お母さんが“くれない様”と戦ったって!」

「えっ?」

「お母さんが救世主みたいだったって!」



男の子の母親は困ったように笑って、
「お母さんは救世主じゃないよ」
と、両手で男の子の頬を包んだ。



「村のみんなで立ち向かったの。みんなで考えて、一生懸命に向き合ったの」

「すっげー!」
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