あなたくれない
琳音が一直線に、私達が歩いて来た川のそばの出入り口を引き返し、私は回り道をして墓地のそばの出入り口を目指す。
「待って、待ってぇ」
と、“くれない様”の声が聞こえる。
(近づいて来ている……!!)
聞こえる声の音量が大きくなってきて、恐怖で足がもつれる。
「わっ!!」
私は足が絡まり、その場に転んでしまう。
どさっ!と、大きな音がした。
右膝から出血している。
「はあっ、はあっ」
息切れした自分の呼吸音が、耳にうるさく感じる。
暗くなり始めた空を見上げると、月の色が見たこともないくらいに真っ赤だった。
「何あれ……」
月の周りには、どういうわけか赤い輪っかが浮かんでいる。
「待て……、待てぇ……」
「!!!」
“くれない様”の声がすぐそばで聞こえた気がした。
(逃げなくちゃ!)
立ち上がろうにも、足が震えて立つことすら出来ない。