あなたくれない
その時。
頭の中で。
駿翔くんの顔が浮かんだ。
お父さん、お母さん。
おばあちゃんの顔。
(殺されたくない)
(私、まだ生きたい!!)
震える足を拳で一度、ガッと叩く。
それでも足の震えはおさまらない。
(お願い、動いて!!)
拳でめちゃくちゃに足をぶつ。
逃げなくちゃ。
捕まったら、きっと殺される。
「……そこにいるの?」
(“くれない様”が来る!!)
“くれない様”の声が聞こえた恐怖からなのか、足が動いた。
立ち上がり、私は走り出す。
泣きながら。
無我夢中で走った。
その時。
「きゃあぁぁああぁっ!!」
悲鳴が聞こえた。
(あぁ、琳音の声だ……!)
アレに、……“くれない様”に、捕まったのかもしれない。
だけど。
私は戻ることなく。
泣きながら、走り続けた。