あなたくれない
……私達の住むこの内日暮村には、小学校しかない。
だから村の子ども達は、中学生になるとバス通学をして、村の外の学校に通うことになる。
私は隣町にある中学校を卒業して、今年の四月からはその近所にある県立高校に通っている。
まぁ、村の同級生のほとんどが、同じ学校に通っているんだけど。
なんていっても、一番近い高校だから通いやすいんだと思う。
駿翔くんは、
「琳音は? 一緒じゃないんだ?」
と、聞いてきた。
「うん。琳音は友達とカラオケ」
琳音こと、須浜 琳音もこの村の子で、私達と同じ高校。
「ふぅーん、穂希は行かなかったの?」
「……私は誘われてないから」
琳音は友達が多い。
私は琳音と友達だけど、琳音の友達とは友達じゃない。
「ふぅーん」
駿翔くんは自治会館の隣にある、村で唯一の自動販売機の前に立った。
私も隣に立つ。
ふいに、山の向こうの空を見上げると、太陽がゆっくり沈んでいく。
村の景色が、オレンジ色になっていく。