あなたくれない
「何度も止めようとした!」
「結果がこれじゃあ、何も意味がないんだ!!」
しんっと、仏間に沈黙がおりる。
その時、玄関のドアが開いた。
「夜分、すみません! 光本さん、失礼しますっ!」
と、声がした。
その声は、琳音のお母さんの声だった。
「あの、勝手に上がりますね」
と、ドタドタと足音が近づいて来る。
その足音から、複数人いることがわかった。
仏間に、琳音の両親と、おじいちゃんが入って来た。
「須浜さん」
と、おばあちゃんが、琳音のおじいちゃんを見る。
琳音のおじいちゃんは、
「大変なんだ」
と、掠れた声で言う。
「琳音が、帰って来ていないんだ」
「……えっ」
と、おばあちゃん。
私を見たおばあちゃんは、
「琳音ちゃんは、どうしたんだっ!?」
と、問い詰めるように聞いてくる。
私は思い出した。
琳音の叫び声。
“くれない様”の声。
恐怖で、体が震えてしまう。