あなたくれない
お母さんが私を支えて仏間から出ようとすると、琳音のお母さんが私の腕を掴んだ。
「待って! どういうことなのか、穂希ちゃんは知っているんでしょう!? おばさんに教えてっ!」
「……っ!」
「琳音は! 琳音はどこなの!?」
私はおばあちゃんを見た。
おばあちゃんは厳しい顔つきで、一度だけ頷く。
「……多分、“くれない様”に……、捕まった……」
私の小さな声が仏間に響く。
「“くれない様”だと!?」
琳音のおじいちゃんが、血相を変えて再び私に詰め寄る。
「どういうことなんだ、村の掟を破ったって、まさか“くれない様”を、目覚めさせたのか!!」
琳音のおじいちゃんが怒鳴ると、おばあちゃんが私と琳音のおじいちゃんの間に入った。
庇ってくれるのかと思ったら、おばあちゃんは私のほうに向き直り、厳しい目で私を見た。
バッチン!!
何が起きたのか、一瞬わからなかったけれど。
左頬が急激に熱を持ち、じんじん痛んだことから。
おばあちゃんに平手打ちをされたことを理解する。
「母さんっ!!」