あなたくれない
「穂希! お前はっ!! なんて子なんだっ!!」
私は左頬に手を当てて、泣きながらおばあちゃんを睨む。
「なんだ、その目は!! 友達を見捨てるような人間が、偉そうに人を睨むんじゃないよ!!」
「……何も知らないくせにっ」
「何も知らないのはお前のほうだよ、穂希!! “くれない様”を興味本位で目覚めさせて、村がどうなるのか、お前は知らないんだっ!!」
「だから、それは琳音がっ!」
黙って聞いていた琳音のおじいちゃんが、
「うちの孫が目覚めさせたっていうのか?」
と、低い声でうなるように言う。
「だから見捨てたっていうのか!! よくも、ひとりおめおめと逃げたもんだな!!」
言い返せなかった。
本当はたくさん言いたいことはあったけれど。
無駄だ、と思った。
(みんな、琳音と同じなんだもん)
怒ると、こっちの話をまるで聞いてくれない。
「穂希ちゃん、琳音は、琳音はどこに行ったのか、本当にわからないの?」
と、琳音のお母さん。