あなたくれない

一階の廊下は。

おばあちゃん自慢の中庭に面していて。

歩いていると、どんより暗い空が見える。



ふと、気づいた。



中庭にある、灯籠(とうろう)が。

何故だろう、倒れている。





「……ひっ!!」



倒れた灯籠に。

カラスがとまっている。



カラスはじっとして。

黒い瞳で、まっすぐに私を見ていた。

恐ろしさに、腰が抜ける。




「お、おか、お母さんっ!! おばあちゃん!!」



大声で助けを呼んだ。

ドタドタと足音がして。

廊下を渡ってすぐの和室にいたらしい、おばあちゃんが来てくれた。



「穂希!?」



おばあちゃんは私を見て、
「何があったんだ!?」
と、私の肩を揺さぶる。



「怖いっ、怖いことばっかり起こる……っ!」



中庭を指差すと、おばあちゃんもそこへ視線を走らせた。



「カァッ、カァッ!!」
と、カラスは怒ったように鳴き、空へ帰って行く。
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