あなたくれない

米子(よねこ)じゃないか」
と、おばあちゃんが苦虫を噛み潰したような顔をする。



「米子さん……」



村で有名な風変わりな人だった。

村の外れに住んでいる、おばあちゃんくらいの年齢の人で。

バサバサの髪の毛は、肩にギリギリつかない程度に伸びていて、白髪と黒髪が混じっている。

汚れた洋服を着ていて、まだ暑いのに、ボロボロのジャンパーを羽織っていて、それはところどころ破れていた。



私達村の子どもは、大人達に口酸っぱく言われて育ってきている。


米子さんに近づいてはいけない。

話しかけられても、答えてはいけない。

決してついて行ってはいけない。



「久しぶりに見た、米子さん」
と、私が呟くと、
「あまり家から出て来ない人だもんね」
と、お母さんも頷く。



家の玄関の前までやって来た米子さんは、
「何かあったんだー? みんな、怖い顔をしてるー。何かあったんだー」
と、笑った。



「うるさい。自分の家に帰りな!」
と、おばあちゃんが米子さんを追い払うような仕草を見せて、玄関ドアを閉めようとする。



「その子」
と、米子さんは私を指差した。
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