あなたくれない

くすぐったいような、恥ずかしいような気持ちになった。



駿翔くんは私から離れて、
「穂希は怖いの、好き?」
と、いたずらっ子みたいな表情で尋ねる。



「好きじゃない、怖いの嫌い」

「あはははっ、そんな気がした」



駿翔くんは楽しそうに笑っていて、そのことが何故か嬉しかった。



「ねぇ、噂話ってどんなの?」



調子に乗って聞いてみる。

駿翔くんは私を見て、
「怖がりには教えない」
と、私の頭をポンポンと撫でた。



その手が。

優しくて。

大きくて。

心地良かった。



(ダメだよ)
と、私は私自身に言い聞かせる。



(ダメだよ、駿翔くんのこと、意識しないで)



駿翔くんは、ダメ。

だって。

琳音が駿翔くんのことを、ずっと好きだったじゃない。



私は気持ちを追い払うように、息を吐いた。






その夜。

スマートフォンが振動した。

見てみると、メッセージが届いている。

アプリをタップすると、琳音からのメッセージだった。
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