あなたくれない
「こんばんはー」
と、米子さん。
乾燥肌なのか、顔も首も手も、白い粉が見えて、シワシワになっている。
「目覚めさせた子に、話したい」
米子さんは私を指差した。
お母さんが私を背中に隠す。
「何もしない。話したい」
米子さんは言う。
米子さんの左の瞳が白濁していることに、私は気づいた。
「目覚めさせた? 言いがかりはよしな。米子さん、あんたと話すことは何もないんだ。帰りな」
と、おばあちゃんは毅然とした態度でハッキリ言う。
「みんな言ってる。目覚めさせたのは、ここの子だって」
「みんなって誰だい? 嘘を言うんじゃないよ」
「嘘、言わない。村中、みんな言ってる。ヒソヒソ、隠れて、怖がっている」
米子さんはニヤニヤ笑う。
「目覚めさせた子と話したい。その子と話したい」